別荘を売却したり、有効活用したりする際に、知っておきたいのが「用途地域」です。これを理解していないと、知らないうちに法律に触れてしまう可能性があるため注意が必要です。
それでは、別荘に関わる用途地域について、順を追って分かりやすく解説していきます。
記事の目次
市街化区域には用途地域が定められる

一つのまとまった都市として整備や開発、保全をする必要のある区域を都市計画区域と呼びます。
都市計画区域は「市街化区域」(既に市街地を形成している区域や、おおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域)、「市街化調整区域」(市街化を抑制すべき区域)、およびこれら以外の「非線引き区域」の3区域に分かれます。
このうち、市街化区域には用途地域が定められます。用途地域とは、土地の使い方を定めた区分のことです。住宅地、商業地、工業地といった区分が設けられており、地域の性質に合わせて建物の用途や規模が決められています。
なぜ用途地域を定めるのでしょうか。もし住宅と工場が隣り合っていたり、学校と娯楽場が近くに立っていたりすると、お互いの生活環境や仕事の利便性に不都合が生じます。用途地域を定め、原則として住宅は住宅地に、工場は工業地に建築することで、住みやすく働きやすい街を維持しているのです。
一方で、別荘の売却や活用をする際に用途地域が思わぬ制約となることがあるため、所有している別荘がどの用途地域に属しているのかを把握することが大切です。
13種類の用途地域とその概要
用途地域は全部で13種類あります。住居系用途地域が8種類、商業系用途地域が2種類、工業系用途地域が3種類です。
住居系用途地域
- 第一種低層住居専用地域 – 低層住宅のための地域。小規模な店舗、事務所を兼ねた住宅、小中学校などが建築可能。
- 第二種低層住居専用地域 – 主に低層住宅のための地域。小中学校、150㎡までの一定の店舗などが建築可能。
- 第一種中高層住居専用地域 – 中高層住宅のための地域。病院、大学、500㎡までの一定の店舗などが建築可能。
- 第二種中高層住居専用地域 – 主に中高層住宅のための地域。病院、大学などの他、1,500㎡までの一定の店舗・事務所など必要な利便施設が建築可能。
- 第一種住居地域 – 住居の環境を守るための地域。3,000㎡までの店舗、事務所、ホテルなどは建築可能。
- 第二種住居地域 – 主に住居の環境を守るための地域。店舗、事務所、ホテル、カラオケボックスなどは建築可能。
- 準住居地域 – 道路の沿道において、自動車関連施設などの立地と、これらと調和した住居の環境を保護するための地域。
- 田園住居地域 – 農業と調和した低層住宅の環境を守るための地域。住宅の他、農産物の直売所などが建築可能。
商業系用途地域
- 近隣商業地域 – 周りの住民が日用品の買い物などをするための地域。住宅、店舗の他、小規模の工場も建築可能。
- 商業地域 – 銀行、映画館、飲食店、百貨店などが集まる地域。住宅や小規模の工場も建築可能。
工業系用途地域
- 準工業地域 – 主に軽工業の工場やサービス施設などが立地する地域。危険性、環境悪化が少ないと考えられる工場のほとんどは建築可能。
- 工業地域 – どんな工場でも建築可能な地域。住宅や店舗は建築可能であるが、学校、病院、ホテルなどは建築不可。
- 工業専用地域 – 工場のための地域。どんな工場も建築可能であるが、住宅、店舗、学校、病院、ホテルなどは建築不可。
別荘地によくある用途地域の種類と特徴

別荘地によくある用途地域の種類は、以下の通りです。
- 第一種低層住居専用地域 – 静けさを最優先した落ち着いた別荘地。建築制限が厳しく、環境重視の方向け
- 第一種中高層住居専用地域 – 利便性と建築自由度のバランスが良い。長期滞在や定住向け
- 無指定地域 – 建築の自由度が高く、個性的な別荘づくりが可能。インフラや独自規制の確認が必要
第一種低層住居専用地域
第一種低層住居専用地域は、別荘地によく見られる用途地域のひとつです。
この地域は、静かで落ち着いた住環境を守ることを目的としており、建物の高さや用途に厳しい制限があります。商業施設や工場の建築は基本的に認められていないため、静けさやプライバシーを大切にしたい別荘利用者には最適な環境です。
その一方で、利便性という点では近くに商業施設が少ないことがデメリットとして挙げられる場合もあります。自然に囲まれた穏やかな時間を求める人や、定住よりも静養目的で別荘を利用したい人に向いた地域と言えます。
第一種中高層住居専用地域
第一種中高層住居専用地域は、住居用の建物が中心でありながら、比較的自由度のある地域です。
低層地域に比べて建築制限が緩やかであるため、眺望を活かした別荘や、二世帯利用を見据えた大きめの建物を計画することも可能です。
日常生活に必要な店舗や診療所などの建設も認められているため、長期滞在や定住を前提とする場合には利便性の高い地域と言えます。
無指定地域
那須高原のように広い別荘地では、用途地域が定められていない「無指定地域」も多く見られます。
この地域は建物の高さや用途に関する制限が緩く、個性的なデザインや広い敷地を生かした別荘を建てられる点が大きな魅力です。
その一方で、インフラが十分に整っていない場合があるため、上下水道や道路の状況を事前に確認しておく必要があります。環境保全の観点から自治体が独自の規制を設けているケースもあるため、建築前のチェックが欠かせません。
自由度の高さを生かして、オリジナリティある別荘を建てたい人に適した地域と言えます。
別荘の用途変更や建て替え時の注意点

別荘の用途変更や建て替え時の注意点は、以下の通りです。
- 用途地域の制限を確認する – 住宅・別荘以外の用途は制限されることがあるため、用途変更前に必ず自治体へ確認する
- 建築確認申請の必要有無を確認する – 建て替えや大規模改修は申請が必要で、怠ると工事中止などのリスクがある
- インフラ整備の影響を考慮する – 上下水道やガスの状況で費用や再建築の可否が変わるため、事前の確認が必須
- 登記内容との整合性を確認する – 未登記部分があると売却や融資に支障が出るため、事前に修正しておくと安心
- 景観条例や環境規制への配慮 – 別荘地独自のルールがあるため、景観や環境に合った計画が求められる
- 用途制限が売却価格や需要に与える影響 – 制限の厳しさで購入層が変わるが、自由度の高い地域は立地条件が価格に影響しやすい
用途地域の制限を確認する
別荘をリフォームして店舗や宿泊施設に用途変更する場合は、別荘がどの用途地域に属し、どのような用途制限を受けるのかを確認しましょう。
地域によっては住宅・別荘以外の用途が認められていないこともあります。特に第一種低層住居専用地域では営業目的の利用が制限されることから注意が必要です。
用途変更を検討する際は事前に自治体や建築士へ相談し、建築基準法や地域条例に適合しているか確認しておくと安心です。
建築確認申請の必要有無を確認する
建て替えや大規模な改修を行う場合は、建築確認申請が必要になるケースがあります。これは、新しく建てる建物が法律や条例に適合しているかを審査する制度です。
特に別荘地では景観や自然環境を守るための独自の建築ルールが定められている場合もあり、申請を怠ると工事の中止や取り壊しを求められる可能性もあります。
建築確認申請が必要であるかどうかを早い段階で専門家に相談して、必要書類の準備や申請の手続きを確実に行うことが大切です。
インフラ整備の影響を考慮する
別荘を建て替える際は、上下水道や電気、ガスといったインフラの整備状況の確認が欠かせません。特に無指定地域や山間部は下水道が整備されておらず、浄化槽が必要になるケースも多く見られます。
インフラ工事には費用がかかるため、建て替え計画を立てる際に総コストとして見積もっておくことが重要です。また、道路への接道条件を満たしていない場合は再建築ができないこともあるため、事前確認を怠らないようにしましょう。
登記内容との整合性を確認する
別荘の建て替えや用途変更を行う際は、不動産登記簿の内容と実際の建物状況が一致しているかを確認することが大切です。
古い建物は増築部分や用途変更が未登記のままになっているケースがあり、これを放置すると売却時や融資申請時に問題に可能性があります。必要に応じて司法書士や土地家屋調査士に相談して、正確な登記内容へ修正しておくことが望ましいでしょう。
景観条例や環境規制への配慮
自然豊かな別荘地は、地域の景観や自然環境を守るための条例が設けられています。建物の高さや外壁の色、樹木の伐採制限などが定められている場合があり、これらを無視して建築すると行政指導を受けることもあります。
特に別荘地管理組合に所属している場合は独自のルールが存在するため、建て替え前に確認しておくことが重要です。地域との調和を意識して建築計画を立てることで、長く安心して暮らせる別荘環境を保つことができます。
用途制限が別荘の売却価格や需要に与える影響
別荘を売却する際、用途地域による制限は価格や需要に大きく影響する重要な要素です。たとえば第一種低層住居専用地域の物件は、静かな住環境を守るために商業利用が制限されています。
そのため、別荘を宿泊施設やカフェとして運用したい人には向きませんが、落ち着いた生活環境を求める層からは高く評価される傾向があります。
一方で、商業地域や無指定地域の物件は事業目的での利用が可能なため、投資家や別荘運営を考える層からの需要が期待できます。ただし自由度が高いぶん、建物の外観や周囲の環境によって評価が分かれやすい面もあります。
つまり、用途制限が厳しい地域では購入層は絞られるものの、ニーズが特定の層に集中するため安定した取引につながりやすい特徴があります。
反対に、用途の自由度が高い地域では幅広い層の関心を得られる一方で、立地やインフラ整備の状況が価格に大きく影響することを理解しておく必要があります。
用途地域外や都市計画区域外の別荘における注意点

用途地域外や都市計画区域外の別荘における注意点は、以下の通りです。
- 建築基準法の適用範囲が異なる点に注意 – 都市計画区域外は規制が緩い反面、安全性や法令チェックが不足している場合がある
- インフラ整備が十分でない可能性がある – 上下水道や電気が未整備のことが多く、井戸・浄化槽など追加費用が発生しやすい
- 再建築不可や制限付きの土地が存在する – 接道義務を満たさないと建て替え不可となり、売却価格にも大きく影響する
- 将来的な土地活用や売却に制約が生じる可能性 – 資産価値が上がりにくく、地域の環境規制によって活用範囲が狭まることがある
建築基準法の適用範囲が異なる点に注意
用途地域外や都市計画区域外の土地では、建築基準法の一部が適用されない場合があります。そのため、建物の高さや用途に関する制限が緩やかで、自由度の高い設計が可能です。
一見メリットに思えますが、耐震基準や防火基準の確認が不十分なまま建築されている物件もあるため、購入や建て替えの際には注意が必要です。
建築許可が不要なケースでも将来的な売却や融資の際に法的な整合性を求められることがあるので、専門家に相談して安全性や法令遵守の確認を行うことが大切です。
インフラ整備が十分でない可能性がある
都市計画区域外では、道路・上下水道・電気といったインフラが十分に整っていない場合がよくあります。先述でも述べましたが自然豊かな地域では、私設の井戸水や浄化槽が必要になるケースも少なくありません。
こうしたインフラを整えるには費用や時間がかかるため、購入前や売却時には現状をしっかり確認しておくことが重要です。また、冬季には凍結や停電といったリスクもあるため、設備の保守体制を整えておくことが安心につながります。
再建築不可や制限付きの土地が存在する
用途地域外は、すべての土地が再建築可能とは限りません。特に接道義務を満たしていない土地は建て替えや増築ができない再建築不可物件となることがあります。
こうした制限は売却価格にも大きく影響し、買主が見つかりにくくなる可能性があるでしょう。売却前は自治体の建築指導課や専門家に相談して、建築可否や法的制限を確認しておくことが重要です。
将来的な土地活用や売却に制約が生じる可能性
都市計画区域外は将来的にそのエリアが再開発や区画整理の対象になる可能性が低く、土地の資産価値が上がりにくい傾向があります。
また、地域によっては自然保護区域や景観条例の対象となる場合もあり、建物の色やデザイン、伐採行為などに制限が加わることもあるでしょう。自由に活用できる一方で、こうした規制を把握せずに計画を立てるとトラブルにつながるおそれがあります。
別荘の活用・売却を検討する際は、現行の法制度だけでなく将来的な土地利用方針まで確認しておくことが大切です。
別荘売却・活用前に不動産会社や自治体へ確認すべき項目
別荘を売却したり、活用したりする前に、不動産会社や自治体で必ず確認しておくべき重要な項目があります。
中でも特に大切なのが、その土地がどの用途地域に属しているかという点です。用途地域によって建てられる建物の種類や高さ、事業利用の可否が大きく変わります。
さらに、都市計画区域の指定状況や建築制限の有無も忘れずにチェックしましょう。市街化調整区域に該当する場合、別荘の建築許可が下りないこともあります。
また、道路との接道条件について接道義務を満たしていない土地は、再建築できない可能性があるため注意が必要です。加えて、上下水道・電気・ガスなどのインフラ整備状況も事前に確認しておくことが大切です。
これらのポイントを事前に把握しておけば、別荘売却・活用時のトラブルを避け、より安全でスムーズな取引につながります。
まとめ
市街化区域には用途地域が定められているので、売却および活用する際にしっかりと確認しておかなければなりません。
建築が認められない用途の建築物は違法建築と判断され、しかるべき措置を取られてしまうかもしれません。そうならないようにするためにも、用途地域の種類や制限を事前に確認しましょう。
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- この記事の監修者
-
株式会社ミライエ
任意売却を中心に3,000件以上の実績
不動産競売流通協会 第1位
テレビ出演経験あり(ビートたけしのTVタックル出演)
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別荘売却のプロが